企画委員インタビュー「変わり続けるマーケティング」 神戸大学 大学院 経営学研究科 髙嶋 克義 教授 【1/3】

神戸大学 大学院 経営学研究科 髙嶋 克義 教授 には企画委員としてマーケティング総合大会にご参画いただいています。
学術的見地からマーケティング総合大会についてお話いただきました。

変わり続けるマーケティング

神戸大学 大学院 経営学研究科
髙嶋 克義 氏

―― 高嶋先生には、長い間、マーケティング総合大会に企画委員としてご参画いただいていますが、マーケティング総合大会の企画委員会はどのようなところでしょうか?

私にとって、マーケティング総合大会の企画委員会は「日本のマーケティングの鳥瞰図」のようなものと思っています。各企業からご参加いただいている企画委員の皆さんと大会の内容を議論するのですが、そこでは「今の日本のマーケティングで何が重要になっているのか」「どのような問題に関心が集まっているのか」といったことが議論されます。その議論自体がマーケティングの現状を明確に映し出していて、とても刺激的です。私のようなマーケティングを研究している者にとっては、企画委員会の議論を聞くだけでも、たいへん参考になります。また、こうした刺激的な議論を反映することで、マーケティング総合大会の企画や構成がより魅力のあるものになっていると思っています。

―― 時代とともにマーケティングの手法やトレンドは変わるわけですが、最近のマーケティングを取り巻く状況をどのように考えていますか?

確かにマーケティングは時代とともに変わります。最近、注目されているのは「イノベーション」との関わり方でしょう。デジタル技術を含めて「イノベーション」が技術者だけの課題ではなくなり、マーケターも製品やマーケティングのプロセスにおける「イノベーション」という課題に取り組んでいます。

マーケティング総合大会の発表内容も、以前は製品の技術的な優位性と販促計画の適切さが別々の段階での議論として説明されていたようなイメージがありましたが、今はそれを統合的に捉えて、「どのようなイノベーションを起こしたのか」という視点で学ぶ場になっていると思います。それは、組織的にさまざまな部門のメンバーが協力することで、ヒット商品が生まれ、市場が創造されるという局面にフォーカスがあたっているとも言えます。このように「マーケティング」を「イノベーション」と関連付け、企業全体による市場創造の取り組みとして理解することができれば、大会の質自体もさらに向上することになると期待しています。

―― 今のマーケティングで先生が気になっていることはありますか?

今は「デジタル」が注目されていますが、その一方で、「デジタルとリアルの融合」というように、「リアル」の重要性も増しているとも思います。この場合の「リアル」とは、実店舗、パーソナル・サービス、対面コミュニケーション、実体験の感動という4つの意味を含んでいますが、そのいずれにおいても、デジタルのコスト優位に対抗しながら、価格競争に巻き込まれないようにするためには、サービスによる差別化を強めることが必要です。そして、それには、人材育成が必要になり、人の課題が出てくるわけです。デジタルの隆盛の裏に、高品質なサービスを提供するためのマーケティング人材の育成が課題になってきていると思います。

「マーケティング近視眼」という古典的な概念があります。今の言い方に直せば、「モノ発想」「シーズ発想」となるでしょう。これらの傾向が産業のデジタル化によって、強まっている気がしています。デジタルの新技術で市場を創造するという方向性は正しいのですが、その過程で「シーズ発想」からいつまでも抜けきれず、市場の潜在需要に無関心になってしまう傾向があるように感じています。とくにプラットフォームビジネスに取り組む企業は、自分たちはプラットフォームを提供することが仕事で、市場創造のために潜在需要を開拓するのは、オープンイノベーションを通じて、プラットフォームを利用する企業が行えばよいというスタンスになっていきます。

しかも、プラットフォームで優位性を得るためには、大規模な資金力が必要になり、顧客ではなく投資家の方を向いた戦略になりますから、ますます「コト発想」「ニーズ発想」から離れていきます。デジタル社会でこそ、マーケティング近視眼に陥らないように市場を創造することが求められていると思います。

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